神戸市教育委員会の係長だった30代男性がうつ病などを患って2020年2月に自死したのは、市が安全配慮を怠ったからだとして、妻と子2人が市に約1億4千万円の賠償を求めた訴訟の判決が16日、神戸地裁であった。地裁は市側の責任を認め、計約1億2千万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
判決などによると、市立小学校で19年10月、激辛カレーを無理やり食べさせるなどの教員間の暴力・暴言問題が発覚。男性は当時、教育委員との調整の窓口を担っていた。出退勤記録を基準にした時間外勤務(残業)は同月、「過労死ライン」とされる月100時間に近い92時間に達していた。
判決は、一連の対応で男性の精神的負荷は相当強かったと認定。翌年2月には睡眠薬を飲むなどの追い詰められた状況と市も把握しながら、産業医への診察を受けさせるなどの安全配慮義務を怠ったとした。
判決後、妻は代理人弁護士を通じ、「市の責任を認めて頂き、夫の無念さを晴らすことができたと思います。2度とこのようなことが起こらないように職員の健康管理の徹底を願っています」とのコメントを出した。
神戸市は取材に「職員が亡くなったことは大変無念。裁判で当方の主張が認められなかったことは残念で、判決文を精査したうえで適切に対応したい」と回答した。(原晟也)
神戸・教員間暴力問題
2017年から19年にかけて、神戸市立小学校に勤務していた30~40代の男女教諭4人が、同僚の20代の男性教諭に暴力や暴言を繰り返したとされる。
被害教諭が体調を崩し、19年9月から欠勤したことがきっかけで発覚した。
市教育委員会の外部調査委員会が20年にまとめた調査報告書によると、この教諭は4人から、「くず」「死ね」などの日常的な暴言▽体当たりやひざ蹴りなどの日常的な暴力▽激辛カレーを顔に塗りつけ、無理やり食べさせる▽プールに放り投げる▽自家用車を汚す――などの被害を受けた。
加害側の教諭4人のうち2人が懲戒免職、2人が停職3カ月と減給3カ月の処分を受けた。
一連の問題では、加害側教諭が被害教諭に激辛カレーを食べさせる動画が連日テレビで放映されるなどし、学校や市教委には苦情や抗議が殺到した。